「トゥルー・ロマンス」レヴュー

はじめに

この作品は、コアのファンに支えられ、何度も上映されたり、DVD、ブルーレイなどで発売され、かなりヒットしました。

今もでも、映画ファンの中で評価が高く、何度もリピート鑑賞する熱狂的なカルトファンもいるようです。しかし、バイオレンス満載のストーリーなので、観る人を選ぶ映画ではあります。

2020年の本屋大賞を受賞した「流浪の月」の中に、この映画「トゥルー・ロマンス」が、頻繁に登場します。その度に、この映画をよく観た主人公の背景や考え方などを読み深めることができます。

物語を演出するような役割を担っていると思います。

筆者の「凪良ゆう」さんは、きっと、この映画が大好きで、何度も繰り返し鑑賞しているのではないでしょうか。この映画エピソードを挿入するタイミングが非常にうまいのです。ですから、この映画を観た人は、「流浪の月」をより深く理することができることでしょう。

基本データ

1993年 アメリカ映画

監督:トニー・スコット

脚本:クエンティン・タランティーノ

出演:クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークェツト、デニス・ポッパー、クリストファー・ウォーケン、ゲイリー・オールドマン、サミエル・L・ジャクソン、ブラット・ピット、ヴァル・キルマー、レイ・リオッタ

音楽:ハンス・ジマー

映画のあらすじ(ネタバレ注意)

激しい恋に落ちた男女が、暗黒街と警察を向こうに回して、逃亡を続ける姿を追ったハード・ロマンス。

カンフー映画に夢中のクラレンスは、勤め先のビデオショップの店長が、誕生日のお祝いに差し向けた、コールガールのアラバマと意気投合し、翌日には結婚を決める。

クラレンスは、アラバマの元ヒモのドレクセイに話をつけに行くが殺されかけ、逆にドレクセイを殺してしまう。そして、慌てふためいてそこにあったバックを持ち帰ってしまう。

そのバックの中には信じられないほどの大量の麻薬が入っていた。

その麻薬を売って現金にしようとする二人に、マフィアと警察が立ちはだかり、二人の逃避行が始まる

みどころ

アラバマが魅力的過ぎる

パトリシア・アークェツト演じるアラバマの魅力に尽きる映画です。この映画が多くのファンを得ているのは、パトリシア・アークェツトがアラバマをとても魅力的に演じているからです。

アラバマは、チャーミングでセクシーそして、芯が強くロマンスを追い求める娘です。そして、ファッションが素敵です。ヒョウ柄、水色のタンクトップ、赤など、どんな色もチャーミングに着こなします。

それらの安っぽい服を着て、躍動する姿がとてもかわいいのです。アラバマというキャラは、女性ファンから絶大な人気を誇っているようです。

豪華な俳優陣

今では、信じられないような豪華すぎるキャスティングです。

主演の2人以外に、わき役のだれもが主演できる豪華メンバー陣です。名優のゲイリー・オールドマンやハリウッドの大スターのブラット・ピットの端役の使い方がとても贅沢です。

その上、マフィアのボス(クリストファーウォーケン)とクラリスの父(デニス・ホッパー)の演技は、主演二人以上です。この二人の演技には、いぶし銀という言葉がピッタリ当てはまります。

このように、今なら絶対にできない(出演料が高騰し過ぎて)すごいキャスティングです。最近、主演のクリスチャン・スレーターとパトリシア・アークェツトをスクリーンであまり見なくなったのはさみしい限りですが。

迫力のバイオレンス・シーン

銃弾が飛び交い、テーブル粉々になり、ガラスの破片が散乱し、鮮血が飛び散るバイオレンスシーンがあります。どのアクションシーンも泥臭さの中にもかっこよさがあるのが、この映画の特徴です。

監督のトニー・スコットは脚本にあるドロドロのバイオレンスシーン叙情的に美しく撮影することに長けています。目を背けるシーンが結構ありますが、それほど不愉快にならないのは、スコット監督の映像センスによるものでしょう。

しかし、アラバマがマフィアに徹底的に痛めつけられる暴力シーンがあるので、バイオレンスが苦手の人は注意が必要です。

スタイリッシュな会話

タランティーノは、粋なセリフが多く、スタイリッシュで有名です。

例えば、クラレンスがアラバマのヒモを撃ち殺して帰宅したときに、「私のために殺したなんて、私のために殺したなんて...何て、ロマンティック!」と言うところです。

この想定外のセリフ内容に、観客は驚くとともに、この映画の破天荒ぶりをに気がつきます。そのときのアラバマのリアクションもとてもロマンチックでかわいいのです。

そして、もう一つは、マフィアのボス(クリストファーウォーケン)と、クラリスの父(デニス・ホッパー)との密室での会話です。

タランティーノの独創的な会話内容から、2人の緊張感がヒシヒシと伝わってきます。このシーンを観るだけでも、この映画を観る価値があると思います。

自分の最期を予感し、クラリスの父(デニス・ホッパー)が、「タバコをもらえるか?」とボス(クリストファーウォーケン)に訊くシーンが、一番シビれるところです。

また、カッコよさはありませんが、さすがタランティーノだと思うところは、クラレンスが「ねぇ、うちでソニー千葉のカンフー映画観ない?」とアラバマを誘うところです。女性を誘う言葉にしては、マニアックです。

ソニー千葉とは、日本のアクション俳優の千葉真一さんのことです。タランティーノは、千葉真一さんのファンで、その上日本映画もたくさん見ています。そこかから、刺激され多くの作品を作っているようです。

このエピソードがあるこは、日本の映画ファンとしてたいへんうれしいことです。

軽快なサウンドトラック

音楽は、ハンス・ジマーが担当しています。曲の特徴は、打楽器を中心としたリズミカルで軽快な感じです。主旋律はマリンバのようです。この曲はTVのコマーシャルでよく使われているの耳にした人も多いのではないでしょうか。

私は、テーマの『You’re So Cool』とエンドロールの『Two hearts』がとても好きです。明るく、弾むようなリズムがとても軽快です。コロコロ転がるように逃げ続ける主人公二人に希望を与えるような曲想です。

ハンス・ジマーが刻むリズムが、よりクオリティの高い作品にしています。

ハンス・ジマーのライブ演奏『You’re So Cool』

存在する2つのバージョン

脚本がクエンティン・タランティーノなので、ストーリーは過激でテンポがあり、当然面白いです。タランティーノが監督をせずに、トニー・スコットに撮影を任せたのは、いろいろな事情があったようです。

監督と脚本家ラストシーンのことで揉め、互いに譲らなかったとの噂があります。結局、監督トニー・スコットの案が通ったようです。

その反面、後にタランティーノは、自分で監督しなかった作品で最高傑作は、この作品だと言っています。スコット監督のバージョンも認めているということでしょう。

いずれにせよ、二人の才能が良い化学反応を起こし、奇跡のバイオレンス映画を完成させたのです。

トニー・スコットバージョンはハッピーエンドです。私は、こちらしか観たことがありません。クエンティン・タランティーノバージョンは、アンハッピーエンドです

タランティーノバージョンのラストは、映画『俺たちに明日はない』(1967年製作)のボニーとクライドのように、数えきれないほどの銃弾を浴び、絶命したのでないかと予想します。

このようにアンハッピーになっていれば、ファン層もかなり違ったものになったのではないでしょうか。

機会がればタランティーノバージョンも、是非、観てみたいものです。きっと、より破滅的な感動が味わえるはずです。

おわりに

以上のようにこの作品はに奇跡のような映画です。純粋なタランティーノ監督作品にある『これでもか!』というブッとんだ感じをトニー・スコットが抑えて演出しています。

その塩梅がちょうどいいのです。そのバランスのおかげで一級品のエンタテイメントに仕上がっています。

まだ、ご覧になっていない方は、是非ご覧になってください。きっと現在たまっているストレスをおもいっきり発散できると思います。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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